Sunday, February 26, 2012

感受台湾

2月20日から24日の間、台北を訪問してきました。学術会議ではなく、授業の一環として東大の1、2年生を連れて行く引率役。台湾大学哲学系の受け入れで、17名の学生が渡航しました。
集まった学生は、韓国、シンガポール、アルゼンチン、中国などの国籍の学生を含む「多国籍部隊」。日本籍学生の中にも親が中国人という人がいました。実際、日本の大学は日本人がいるところ、という前提自体がすでに現実をとらえられない古い固定観念になりつつあるのは言うまでもないことで、その点で、特徴的なグループだったのです。
事前に台湾大学の学生からは、映画『海角七号』についてディスカッションをするよう提案されていました。多様なバックグラウンドの人々が、今は遠い1945年の手紙に導かれるように、運命を受け入れつつ、コミュニティを再生していこうとするこの物語は、台湾の現状を表しているだけではなく、今回の訪問団にとっても、象徴的な作品だったかと思います。
集合の場所と時間を守れなかったり、集団としての動きが全く苦手な、不思議なグループではありましたが、それはまた、個々の関心の多様性を示すもので、画一的に動くことを強いられる日本社会の伝統から見ると、むしろ好ましいことだったかも知れません。

最終日の午前、ホテルのチェックアウトを済ませた後にできた時間の空白を埋めるためにカフェを探して小道に入っていくと、「蒙藏文化中心」なる施設が。あいにくカメラを持っていかなかったので、紹介サイトのアドレスを貼り付けておきます。(http://daanbook.blogspot.com/2010/10/blog-post.html )
中は5月までの予定で工事中とのこと。一人だけいたスタッフの方に聞くと、行政院蒙蔵委員会が大陸委員会に吸収される予定なので、工事終了後の展覧活動がどうなるのか、全く見通しがたっていないとのこと。台湾の多文化・多言語社会の豊かさについて、複数のチャネルを通じて、見て、聞いて、考えた今回の訪問でしたが、その陰で、忘れられ、消え去っていく民族文化もあるのです。彼らは、「外省人」としてひとくくりに論じられていたことでしょう。台湾デモクラシーの道のりとは、一人ひとりに異なる存在の息づかいを、極端に単純化された二項対立のレッテルの中に閉じ込めてしまうことの恐ろしさに気づくことだったかも知れません。モンゴルやチベットの記憶が台湾社会から薄れていくことは、時代の流れとして自然なことでしょう。その忘却が、多様性と個の息づかいに対する尊重と寛容の結果であれば、必ずしもそれは嘆かわしいばかりではないでしょう。

あさっては、「二・二八事件」65周年。

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