『鉄西区』については、吕新雨《铁西区:历史与阶级意识》(《读书》2004年第4期)という秀逸なレヴューがあって、作品を見たことはありませんが、当時たいへん興味をそそられたものです。
イベント全体が12月にロードショー公開される『無言歌』のためのイントロダクションにもなっているようですね。オリジナルタイトルは《夹边沟》。甘粛省酒泉(敦煌への入り口。衛星発射センターでも有名。)は、中国有数の砂漠地帯ですが、1957年の反右派闘争では、右派分子とレッテルを貼られた人びとが、当地の労働改造農場へ送られたといいます。この映画はドキュメンタリーではなく、労働改造に送られた人びとを描いたノンフィクション小説、杨显惠《告别夹边沟》をもとに制作されたものです。原作者の楊顕恵は、甘粛省出身、自らも建設兵団へ下放された経歴を持つ人です。
ドキュメンタリーの手法は1990年代から中国の映像作家たちが得意としてきたものです。ドキュメンタリー映画は反体制的ナラティヴという感じもありますが、90年代に中国の朝のお茶の間を彩った『東方時空・生活空間』のように、主要メディアでも「庶民みずからの物語」を語る(讲述老百姓自己的故事)言語としても注目されてきました。おそらくそれは、あくまでも写実主義的なリアリティを追求し続ける中国現代小説の伝統と軌を一にするあり方だと思われます。
中国については社会主義体制に対する外在的なまなざしで、「体制-反体制」、「抑圧-自由」、「専制-民主」などなどといった二分論のもとに単純化された認識が蔓延しています。しかし、ドキュメンタリーが現代中国における芸術的スタイルの一つとしてかくも力を持ってきたこと自体がもつ歴史性を考えてみると、そのような二分法ではおよそ到底中国の「生活」に近づくことはできないことは明らかです。そもそも、呂新雨の『鉄西区』批評は、中国の社会主義体制下における民族工業建設の歴史そのものが、ルカーチのいう物象化と切り離すことのできない、資本主義工業化の一つのヴァージョンであったことを知らせるものにほかなりません。中国を理解する眼はつねに複眼的でなければならない、ということをとりあえずここで思い出しておくことにしましょう。もちろん、個人の生のディティールに密着することが実は普遍的な問題への重要なアプローチであるということも。
以下は、イベントの全スケジュールです。(提供してくれた秋山珠子さんに感謝。)
いつものことだけど、見に行く時間はないなあ。
■『無言歌』公開記念 ワン・ビン全作一挙上映!@オーディトリウム渋谷
期間 ●Part1:10/8(土)─10/14(金) ●Part2:11/5(土)─11/11(金)
中国のワン・ビン監督。
『鳳鳴─中国の記憶』で、
本にも熱狂的なファンが多いことでも知られる、
画監督の1人です。
この度12月に新作『無言歌』
全フィルモグラフィー6本を上映する本格的レトロスペクティブを
Part1期間中には12月17日の公開を前に『無言歌』
は、プロモーションの為に来日中のワン・ビン監督が登壇し、
論家)と、市山尚三氏(東京フィルメックスプログラム・
います。さらに、入場料無料で、どなたでも参加できる、ワン・
ッションもあります。この機会をお見逃しなく!
◆上映スケジュール
part1:2011年10月8日(土)ー10月14日(金)(
10月8日(土)10:30-「鉄西区 1部」(途中休憩10分)/15:10-「鉄西区 2部」/18:30-「鉄西区 3部」(20:40終了予定)
10月9日(日)9:00-「原油 1部」(途中休憩10分)/16:20-「原油 2部」(途中休憩10分・23:30終了予定)
10月10日(月・祝)13:00-「名前のない男」/15:
10月11日(火)13:00-「石炭、金」/14:20-「
10月12日(水)13:00-「鳳鳴―中国の記憶」/16:
定)
10月13日(木)13:00-「原油 1部」(途中休憩10分・20:40終了予定)
10月14日(金)13:00-「原油 2部」(途中休憩10分・20:40終了予定)
スペシャル・プログラム
1:10月10日(月・祝)15:00 『無言歌』特別先行上映+トークショー
2:10月12日(水)16:15 ワン・ビン監督とのQ&Aセッション(無料)
part2:2011年11月5日(土)ー11月11日(金)(
11月5日(土)13:00-「鳳鳴―中国の記憶」/16:
11月6日(日)13:00-「石炭、金」/14:30-「
11月7日(月)13:00-「鳳鳴―中国の記憶」/16:
11月8日(火)13:00-「原油 1部」(途中休憩10分・20:40終了予定)
11月9日(水)13:00-「原油 2部」(途中休憩10分・20:40終了予定)
11月10日(木)13:00-「石炭、金」/14:15-「
11月11日(金)13:00-「鉄西区 2部」/16:15-「鉄西区 3部」(18:25終了予定)
◆各プログラム入替制/自由席・整理番号制
◆料金
1回券=1,500円(「石炭、金」は1,000円)、3回券=
※10月10日(月・祝) 15:00「無言歌」上映+トークは別料金となります。
前売券1600円(整理番号付・劇場窓口での販売) 当日券1800円均一
※作品詳細、スケジュールは、オーディトリアム渋谷HP
( http://a-shibuya.jp )まで。
※お問い合わせ ムヴィオラ;03-5366-1545
オーディトリウム渋谷;03-6809-0538
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