Tuesday, August 23, 2011

沟口雄三著作集

北京の三聯書店から、『溝口雄三著作集』の刊行が始まりました。
逝去からわずか一年という、本家の日本より速い動きは、溝口中国学の中国への影響の大きさを物語っています。
既発表の書目は次の通り。

《中国前近代思想的屈折与展开》,龚颖译,2011年7月
《中国的冲击》,王瑞根译,2011年7月
《作为方法的中国》,孙君悦译,2011年7月
《中国的公与私·公私》,郑静译,2011年7月

溝口雄三の中国学とは何だったのか検証する必要があると、ある著名な中国人学者が溝口の生前に話していたものです。その学問には乗り越えられるべき点が多々あるにちがいありません。生前にそのようなチャンスが持たれなかったことで、もしかすると世代交代のテンションが永遠に弛緩してしまったのだとすると、実は貴重なものをわたしたちは獲得できなかったということかもしれません。
日本の学界地図も、中国知識界とのネットワークの姿も、2000年以降大きく変わりました。中国を語る言説を取り巻く環境も急変しています。2000年に大学院再入学を決めて日本に帰ってきたときには、まだ「知の共同体」が続いていて、歴史認識問題が広く論じられていました。そのころにいまのような状況が想像できたでしょうか。いつの間にか、学知の、静かなしかし大きな地殻変動が生じているということでしょう。今後10年の趨勢をおそるおそる想像するのは些かスリリングなことです。
著作集の大きな広告を背表紙に載せた『読書』8月号には、村田雄二郎氏の辛亥革命をめぐるエッセイが掲載されています。氏のブログでも紹介されているのでご存じの方も多いと思います。偶然とは言え、ここに象徴的なものを読み取るのもあながち間違いとは言えないでしょう。

1 comment:

石井剛 ISHII Tsuyoshi said...

ちなみに、今回出版されたのは、計画の半分。来年あと4冊が刊行されて、全8冊が完成するとのことです。