Monday, June 22, 2009

蟹工船

小林多喜二『蟹工船』と言えば、日本のプロレタリア文学の最高峰として中国でも早くから紹介されています。『読書』2009年第6期の秦刚《罐装了现代资本主义的〈蟹工船〉》によると、1929年の出版後まもなく、現代劇作家として著名な夏衍がすでに書評を発表しているほか、1930年には潘念之によって中国語版が刊行されているそうです。海外文壇の動向にとても敏感な中国らしく、日本での最近の「蟹工船」ブームを受けて、2009年1月には新訳が出版されてます。秦剛氏がここで紹介しているのは、しかし、この訳林出版社版ではなく、出版準備中の《蟹工船》漫画版(秦刚、应杰译,人民文学出版社即出)のほうです。これは、『劇画「蟹工船」:小林多喜二の世界』(白樺文学館多喜二ライブラリー企画、藤生ゴオ作画、講談社、2008年)の翻訳ということで、島村輝氏の解説もしっかり掲載されているのだそうです。
この文章は、ブームの背景にある日本社会の現状についても丁寧に紹介しています。例えば、「ロストジェネレーション」、非正規雇用、「ワーキングプア」、自殺率の上昇などなど。
プロレタリア文学といえば中国ではひどく教条主義的イメージが強いようで、多喜二の知名度と好感度はたぶん相反している可能性があります(魯迅すらもそうですから、しかたがないといえばそうなのですが)。ましてや、戴錦華氏の指摘を待つまでもなく、マルクス主義的、階級論的言語が分析のツールとしての効力を完全に失って久しい現在、マンガという形式が有効な選択肢になるというのも肯けます。

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